がんばれ負けるな必ず勝て

舞台とジャニーズと音楽の話をします。

おかえり、ニュージーズ!

 

 2021年11月17日、大阪梅田芸術劇場メインホールにてニュージー日本初演の幕が下りました。出演者1名が稽古中の怪我で降板しましたが、1日も欠かすことなく全39公演をやり遂げたことは本当に当たり前のことではない。それはコロナ禍に直面している今改めて強く思うことです。カンパニー1人1人の努力を持って成しえたことです。

 そして何よりニュージーズの再演が決まって本当に良かった!!公演の中止が決まって失意の底にいた京本くんがしばらくミュージカルの曲が聞けなかったこと、そんな京本くんが劇場で観劇していたことを知ったときホッと胸をなでおろしてたことをぐるぐると考えてしまいました。ファンとして他の共演者の方々が次々と舞台のお仕事をしているのを横目で見ていて感じていた心のざわざわを本人が「焦り」として表現したことも心に残っています。

 

 

 さて、本題にいきましょう。ニュージーズのストーリー自体はディズニーミュージカルらしく、わかりやすい悪役がいて、主人公を支える仲間がいて、そしてヒロインがいる。誰も死なない、悪役も倒せる、ヒロインとも結ばれるハッピーミュージカルでした。そして何より音楽がいい!9月にもアラン・メンケン作曲のミュージカルを観に行きましたがその作品よりも圧倒的に耳に残るパワーがありました。

 時代背景や政治的なメッセージとか求めている人には少し弱い題材かもしれません。ウィーン系のミュージカルで描かれるフランス革命のような歴史に残るターニングポイントではありませんし、最後はトントン拍子でお話がまとまっていきます。2幕は結構駆け足かなと思いましたが、この脚本自体はもともとのものですし、文句はありません(笑)私はそれよりも「見やすい」というところがこの演目の良いところかなと思いました。

 最近の主流はコロナ禍ということもあり演者が少ない舞台が多いですが、ニュージーズは主人公ジャックを囲む仲間たちがそれぞれ配役されていて、大所帯。若手の踊りが上手く、ちゃんと歌える方々を集めたなという印象です。新聞を売りに行くシーンやストライキを決行するシーンなど人がいる説得力のあるシーンでは群舞が光りました。ダンスシーンは圧倒的に2階席からが良いです。バレエのピルエットやジャンプも見てて気持ちがいいし、2幕冒頭のタップシーンも見応え抜群です。オーディションも25歳以下の年齢制限があったとのことでしたし、ある種実在していた彼らに近い青臭さやエネルギーがあってとてもよかったと思います。特に石川新太くん。声質も良くて歌もうまくてタップもできる。今の誰だ?!とオペラ外すとだいたい新太くん。視線泥棒具合がすごかったです。

 ここ数年ミュージカルを観ることを趣味にしていますがやはり演目を選ぶのは題材とプリンシパルということが多くて正直アンサンブルまで目が行かなかったことも多かったんですよね(わたしのミュージカル観劇出身が2.5というところもあるかもしれませんが)。ニュージーズたちはその他多勢と見られがちですが1人1人役名があることもあって観てるこちら側もどんどん思い入れが出てくるのが新鮮でした。ニュージーズたちの細かい演技やダンスにも注目したくてチケット増やしたくなりました(残念ながらチケットは増えませんでした…)

 

 セットは英字新聞の記事をモチーフにした背景とオーケストラピットのぶち抜き、そしてジャックとクラッチーの寝床である屋上が印象的。

 大きな背景セットには雑踏を表現するために通行人のシルエットが投影されたりしました。ある意味一般人をやるアンサンブルが少ないのでなるほどおもしろいなと思いました。

 また、オーケストラピットをぶち抜いてそこで芝居する舞台を見たことがなかったので初見で面食らいました。本来のオケピの出入口を役者の出入口に転換していて、場面転換や逃げたりするシーンでは効果的に使われていました。ただここでの芝居は席によって見えかたが大きく左右されてしまうのでちょっともったいない…。銀橋だったら良かったのにと何回かは思いました。(やめなさい)特にもったいなかったのはクラッチーが捕らえられたのを目撃して感情が揺れるジャックのシーン。オケピから舞台につながる階段での芝居でしたが、席によっては声しか聞こえず今何が…?となってしまいます。

 最後に屋上のセット。1幕冒頭のサンタフェ、1幕終わりのサンタフェ、2幕のキャサリンとのデュエットもここで行われます。このセットなんと昇降します!!!ただでさえ、板よりも上のセットなのにクライマックスでは舞台の前面に移動、セット上で手前へ移動&上昇するので1階前方だと見上げる形に。逆に2階だと目線の高さくらいまで来ます。このセットの昇降感もなぜだか宝塚を思い出してしまって、じわじわ来てしまいました。イケコの香りを感じられて面白かったです。

 

 

プリンシパルの皆さまの感想も少しだけ。

 

ジャック(京本大我くん)

 エリザベート以来拝見しましたが、低音がしっかり出ててびっくりしました。やっぱり普段の音楽活動では使わない歌い方ですし改めて目の当たりにするとそのスキルに殴られました。期待以上でした。役作りなのか江戸っ子口調は正直慣れるのに時間がかかりましたが、セリフは聞き取りやすいですし良かったと思います。初観劇が初日の次の週でそこから大千穐楽まで数回観劇しましたが、芝居も変えてきて、歌唱芝居も変えてきて、ちょっとびっくりしちゃいました。初日見た時少し気になったセリフの緩急と表情のお芝居(あとキスシーン)も観るたびに良くなっていて彼の吸収力を思い知ると同時に大阪があと10公演あったのならどうなっていたのだろう、と震えました。

 

キャサリン(咲妃みゆさん)

 宝塚時代の噂を友人からほんのりと聞いていたのですが、退団後お見かけする機会がなく、今回初めて拝見しました。ディズニープリンセスを演じるにあたるお芝居、歌唱すべてが説得力があってすっかりファンになりました。キスシーンでのさりげない背中に回る手の動きやジャックと対面したときに髪を耳にかけるしぐさなど女心がわかりすぎている。印象的だったのはソロ曲。英語→日本語の発音に由来する難しさというんでしょうか、もともと英語詞用のリズムなので歌詞が詰まっているんですけど難なく歌い上げていて聞いてて気持ちがよすぎる。2幕冒頭キャサリンとニュージーズたちで歌い踊るシーンではポーンと抜ける高音にびっくりしました。あの中で女性なのキャサリンだけなのに…。すごい女優さんと出会ってしまいました。

 

クラッチー(松岡広大くん)

 久しぶりの広大くん。NARUTO以来かな?スリル・ミーの評判を聞いていたので楽しみにしていました。おちゃらけもシリアスも演技の見せ場があって演じている側楽しいだろうな?!生き生きとしてましたよね。冒頭の2人芝居でジャックに家族と言われてグシャと笑う笑顔がたまりませんでした。逆に2幕、感化院のシーンでクラッチーがジャックに兄弟と手紙で語り掛けるのも繋がりが見えてよかったです。逮捕されて連行されるシーンの悲痛な叫び声、胸に迫りました。足が悪く松葉杖をつく役どころでしたが、ダンスも周りに劣らず足1本と両腕それに身体全身を使っていてかっこよかったです。

 

ディヴィ(加藤清史郎くん)

 舞台で拝見するのは初めてでしたが、お芝居が良いし、歌うとこれまたびっくりしました。声の感じが結構変わるんですね。家庭環境も恵まれていて、ニュージーズたちとは毛色の変わったキャラクターでしたが、ストライキの片棒を担がされてどんどん「ニュージーズ側」に立場が移り変わるそんな心情の移行がナチュラルだなと思いました。ストライキを破った仲間や心の折れたジャックに語りかけるシーンはいい意味で力が入っていて見ているこちらも心のギアがあがるような巻き込まれるお芝居でした。

 

ピュリツァー(松平健さん) 

 松平さんも生で拝見するの初めてでした。悪役というか権力者のオーラがあってジャックたちが敵わないなと思わせるような立ち居振る舞いはさすがの貫禄でした。常日頃から歌唱力=戦闘力だと思っているので2幕の歌唱シーンはもう少し迫力が欲しかったなと思います。ジャックと和解しあうシーンがコミカルで好きでした。

 

メッダ(霧矢大夢さん)

 メッダの包容力、やり手なところの表現が大好き。ストライキに失敗して現実逃避しているジャックに語り掛けるシーンが大好きです。ソロ曲では観客に美脚を見せつけるシーンあり。お歌も相変わらずお上手なんですよね…。この曲1曲だけなのが本当にもったいないです。

 

 

最後に、改めて

「おかえり!ニュージーズ!」

 

 パンフレットにある通り楽曲と脚本のみの使用許可という限られた条件のなかで日本版を作り上げた制作の皆様、日本初演という手本のない中模索し続けたキャストの皆様に心からの拍手を。東宝がディズニーミュージカルをてがけるとこうなるといったひとまずの前例を見届けられたことを嬉しく思います。演目との出会いはまさしく一期一会ですからね。東宝がどれだけ上演権利を買ったのか推し量れませんが、再演を重ね今後多くのミュージカルを目指す若者たちの登竜門、経験の場になることを願います。

 

 

 

前回の記事において再演を願って結びとしましたが、大千穐楽で京本くんから紹介されて登壇される小池先生を拝見して夢がかないました。